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 子供の頃ウルトラマンは本当に大きいのだと信じていた。ある日母親に連れられていったデパートの屋上で握手したウルトラマンに、なぜ今日は大きくないのかと思わず尋ねてしまった程信じていた。それはTVの中で、戦うシーンにおいて使われていたミニチュアや撮影技術が非常に精巧で、ミニチュアであることを意識させなかったからであり、「すごいミニチュア」などとは言われたことも思ったこともなかった。

 現代に置き換えると、コンピュータグラフィック(以下CG)がそれにあたるもので「すごいCGだ」と観るものに言わせてしまったり「フルCGで見せます!」などとキャッチコピーにうたったりしている間は、技術の本当の役をまったく果たしていないばかりか、単なる技術者同士の業界オチになってしまっていると言えるだろう。一旦観るものにそれを意識させてしまうと、その向こうにある感動や喜び、そして情報などを伝える妨げになってしまうからであり、感動の再会のシーンでの「うわー、すごいCG」という感情は邪魔なだけであり、むしろ使用を隠した方がいいくらいである。CGが娯楽や広告に使用されるようになってかなりの年月が経つがここ数年でようやく本来の使われ方である、「どこでCGを使っているのか、そもそもCGを使っているのかどうかさえあまり意識させない」という意図で作られた制作物が増えてきた。

 そんな中かなり早い段階からそれを意識しながら「最近の技術をもってしてやっと仕事にも使えるようになってきた」というフォトグラファーでCGも扱う木村洋一氏にインタビューを試みた。

(各作品はクリックすると拡大表示します)

 

作品
Q1:複数のジャンルでお仕事をされていますが、それぞれの役割や割合は決めているのでしょうか
 根本的にはフォトグラファーなのでCGやWEBなど他ジャンルの仕事、というか技術はそのサポートとして考えています。ただ、たとえばCGだけの依頼なども流れの中で存在はするので、実際の作業量でいくと写真とその他では7:3位になります。割合も特に決めている訳ではないのですがあくまで写真をより良くしていこうとした結果ですので、CGなどが写真自体を割合として越えることはないと思います。
 
Q2:幼少のころから歴代のなりたかったものを教えてください
 いろいろ変わってきています(笑)。小学校のころは科学者で中学でギタリスト、そして高校に入ってバイクを覚えてモトクロスをやっていきたいなと考えて実際レースなんかにも出ていました。でも家庭環境がクリエイティブ寄りだったこともあってだんだんカメラを専門的に勉強するようになってからは「これでやっていくんだな」という意識、というか漠然と感じるままもう20年くらいここまできた感じですね。
始め学校を出たばかりの頃は関口照生氏に師事していたのですがそれもよかったです。若いしいろいろとやってみたい時に基礎をきっちりやらされたので、いろいろな意味でいい人に師事させて頂いたと思っています。
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Q3:CGに初めて触れた時と本格的に入ったときのきっかけや気持ちはどんなものだったでしょうか
 はじめは写真の簡単な修正などをグラフィックのソフトでやっていたのですが、2Dでの修正に限界を感じていて、ある時電気機器の光るインジケータを光らせなきゃならないといったことがあり、そこで初めて簡単な3Dで作ったものを使用したらこれが思った以上に上手くいって。それ以来少しずつ使うようになってきました。とにかく、CGだっていうのが分かっちゃうようだと意味がないので始めはいろいろ試しつつだったし、クライアントの方でもはじめからCGっていうとイメージがいわゆる「ポリゴンで」っていうものだったので、はじめのうちはフラストレーションも多かったですね。
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Q4:更に仕事のジャンルを増やすとしたらどういった方向にいきたいですか
 仕事のジャンルとしてはフォトグラファーだけなのですが、それをサポートするにあたっていろいろと新しい技術も使うようになってきて、今後は物だけでなくスタジオハウス(撮影に使う家)自体をバーチャルな空間で作っていけたら融通がよりきくようになったり世界もいろいろと広がったりしていくんじゃないかなと思っているので、その辺を充実させていきたいです。
 

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木村氏の作品はこちらのアドレスにて公開中

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Q5:通常のプロジェクトの流れや決め事などを教えてください

 まず依頼がきてその詳細を詰める打ち合わせをします。内容がCG制作だけであればそこからプレイメージを上げてキャッチボールをした後で仕上げて納品ですね。撮影もからんでくるとそこに実際のスタジオの手配や撮影画像の加工などが入ります。撮影とCG両方できるということでアートディレクターの人もこれは撮影した方がいいのか、それともCGアーティストを手配するべきなのかを迷う必要がなくったのでその分大きな枠で仕事の依頼を受けていますね。

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きむら・よういち
7年前に撮影のみではなく画像の加工も出来ればとPhotoshopを始める。
そのうちPhotoshopで出来ることの限界に気がつき3DCGを手がけるようになる。
始めてから1年ほどで使用したソフトShadeのパッケージ裏に作例として採用されるまでに至る。
その後、Shadeに関し雑誌で記事を執筆するようになり、2002年にShadeに搭載された
フォトリアルレンダラー・パストレーサーのデビューとともに、それを生かしたノウハウの紹介や作例などを多く手がけるようになった
http://www3.famille.ne.jp/~phkimura/index.html
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