インタビュー
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  ここ10年程で、ファッションシーンは音楽やその他のカルチャームーブメントと同様、一つのブランドが一世を風靡するというよりは、一部に熱狂的なファンを持つブランドが多数立ち並び、それぞれの個性を発揮するという流れを持ってきた。
その中で東京では裏原宿や恵比寿近辺を中心に独自のカラーと独特の勢いを持ったショップが集まり、それぞれのカルチャーに対して常に新しい感じ方とデザインを提供し続けている。そういったファッションブランドは洋服のデザインだけでなく、音楽、アクセサリー、ショップ、パーティなどムーブメント全体をプロデュースしており、もはや単なるファッションブランドでは括れない位置付けとなってきている。

今回のインタビューではそんな恵比寿にメインショップを持ち、サイバーなデザインでファンを魅了し続けるARSITRISTのデザイナー兼代表であるMartina Chonoにスポットを当て、デザインのコンセプトやこれからについて聞いてみたものを、2回にわたってお届けする。 1回目となる今回はデザインをはじめたきっかけや当時の環境、そして今までの流れの中でデザインにどのような変化があったかなどについて聞いてみた。


:: デザインを始めるようになったきっかけを教えてください
まず日本に来たのが1989年位だったのだけれど、それまではドイツでとても忙しく働くことに慣れていたのに、突然たくさんの時間ができてしまったの。知り合いも少なかったし日本語も分からなかったのでテレビもラジオも本も無い状態。ファッションシーンは常に私にとって非常に重要なものだったのに、日本で売っている服は私にあうものがなかなかなくて、全体的に文化的な表現に対するストレスはかなり溜まっていたのね。

そんな風に数年は過ごしていたのだけれど、今から丁度10年位前に、当時結婚したての主人(プロレスラー蝶野正洋氏)のコスチュームを作らないか、という話になってそれを手がけたのがきっかけね。当時主人のコスチュームは白をベースに緑のラインのミックスを基調にしたものだったのだけれど、私の地元(ドイツ)のサッカーチームのカラーがそれで、個人的にもう飽き飽きした色だったので、あまり魅力的ではなかったの。そこから少しずつ私が好きな色や素材を使ってデザインしていったわ。本人も気に入っていたし、黒はもともと私も好きな色だったの


:: キャリアの中で、ご自分のデザインはどの様に進化してきたと思いますか
作るものが自分の持っているイメージに少しずつ近づいてきた感じね。
まだ完全では全然ないけれどかなり近くはなってきているわ。イメージ自体は始めた当初から変わらないけれど、それを実際に表現するのは、何の世界でも同じだと思うけれど難しいわね。素晴らしい絵を想像はできても実際には描けないのと同じ。

私は今でもあまり自分のことを「デザイナー」とは呼ばないし、元々そういったクリエイティブサイドのことをやることになるとは昔は思ってもいなかったわ。それが流れでこういう感じになってきたから、やっぱり少しずつ良くしていくしかないわね。
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具体的な進化としては、デザインするものが個人的なものからパブリックになってきたところかしら。デザインを始めた当初は、コスチュームにしても業務用のミシンを自分で購入して作ったりして非常に個人的な制作環境だったのが、今はスタッフも20人近く抱えて、広く一般にアピールできるものをデザインしているわ。
:: カテゴリー的にはどの様な展開をしていて、今はどこに注力していますか
まずコスチューム、帽子なんかも含めた男女の服、それからアクセサリー、サングラス、そしてカレンダーや時計の様なグッズ全般などね。
今一番注力しているのは男性服。今回初めて秋冬のコレクションをトータルでまとめることができたの。今まではある程度スポット的でバラバラに、その場その場のデザインでやっていたのを、これをきっかけにきちんと1年を通した流れに乗せることができそうなの。
今は割いているエネルギーとしては男性服が60%から70%位かしら。当然これは時期によって変わるので、1年の中でサングラスに注力するときもあれば、コスチュームをやらなきゃいけない時もあるけれどね。今はそんな感じよ。

<参考URL>
ARISTRIST Official Site
www.aristrist.com
● 次回(10月11日更新分)ではデザインのコンセプトやこれからのビジョンについて伺います。お楽しみに!