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mori toshimitsu Vol.7
  「デザイナー」というのは実際仕事として具体的に何をしているのかが分かりづらい職業だ。理由としてその定義と括りが非常に広い範囲にわたるからであり、なんとなくクリエイティブな仕事なんだな、といった印象を受けるだけで終わることも多々ある。実際に細かく分けて見るとやはりその幅は広く、非常に一般的な服飾などのファッションデザイナーやポスターなどのグラフィックデザイナーから、商品などをデザインするプロダクトデザイナー、そして空間を作り出す空間デザイナーなどというものまであり、そのクオリティを見ても何年もの教育や勉強、誰かに師事しながらの修行が必要なものから、「センスがいい人や著名な人がなんとなくやってみました」というものまで千差万別である。

しかし昨今のPCの性能アップによって紙のグラフィックデザイナーがWEBまでそのデザインの範囲を広げたり、同じ延長上で映像を手がけたりといったことが可能となり、デザイナーが一つのジャンルに収まらなくて良い状況になったのも事実である。

今回は元々大手家電メーカーであるシャープのプロダクトデザインから始まり、グラフィックデザインや映像、そして最近ではホンダや松下のデジタルインターフェースのデザインなども行うまさにクロスジャンルなデザイナー森俊光氏にインタビューをしてみた。

Q1.現在メインで活動しているのはどんなフィールドですか。
メインで活動というよりは仕事としてインターフェースデザインなどが多いですね。あと映像ソフトウェアの開発もやっています。具体的にはホンダの次世代カーのインパネや松下のカーナビゲーションのインターフェースデザインです。元々動画のデザインを得意としていたのですが、最近の技術で徐々にいろいろなもののインターフェースが動画ベースになってきたのでそういった依頼が多いんだと思います。
これからもPDAや家電などで動画インターフェースの流れが出てくるので、そういった仕事はまだまだ増えてくるでしょう。ソフトに関しては以前出した「FUSE」という映像ミックスソフトの2003年バージョンに取り組んでいます。
※クリックすると拡大できます。 work
Q2.子供時代からクリエイティブなことに興味を持っていましたか?それはどんな内容でしたか。
小学校の頃からはっきりと「デザイナーになりたい」というのはありました。身の回りのものが、自分の好きなもので埋まっているというのが理想だなとその頃からずっと思っていて、小学校の卒業作文に「将来はデザイナーになりたい」と既に書いていました。その頃はプロダクトデザイナーという単語を知らなかったのですが、今考えるとイメージとしては工業製品のデザインだったんでしょうね。そのまますくすくと育ちました(笑)。
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Q3.アマチュアからプロになったなと思ったのはどんな時ですか。
プロだな、と初めて思ったのは学生の頃バイトでグラフィックデザインやポップデザインをやっていたのですが、初めての仕事ができあがって、実際の物が展示されているのをお客さんが見て喜んでいて、最終的にそれでお金をもらったときです。でもいわゆるプロ意識を持つようになったのはシャープの時に自分がデザインしたものが工場で何万台と生産された時ですね。友達の家に行ってもそれがあるし、一度などはモルジブに旅行で行ったら自分がデザインしたテレビデオを見かけて、嬉しいというよりは責任を感じましたね。デザインは下手なものを作ったら地球全体を汚しちゃうんだな、と思って。

Q4.今まではどのような仕事をされてきましたか。
学生の頃にデザイン会社や電通などでバイトをしていて、そこでは名刺やイベントのポップなどをやっていました。大学を卒業してシャープに入社した後はプロダクトデザインですね。液晶モニターとか。独立してからは映画が元々大好きで映像も学生の頃から作っていたのでそういった仕事やカタログやパンフレットなど紙の仕事もやりましたね。そして最近ではデジタル系の、映像を絡めたインターフェース。あまり流れに逆らわずに自然に求められるものを楽しくやってきた感じです。

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Q5.クリエイティブにあたって「これは絶対」というような自分のルールはありますか。
ギリギリまで遊ぶ(笑)。でも実際充実した自分を作らないと仕事に入るのは難しいですね。後は当たり前といえば当たり前ですがクライアントを楽しませる、その上で自分も楽しむというのも大事にしています。逆に予算と時間がない、という仕事は避けるようにしています。そういう話も多いのでやらない訳ではないのですが大抵納得のいくものができないのでそういうときは悲しいです。まあ全体的に「これ」っていうようなルールは逆に作らずに流れでやっていける感じが好きです。
● 次回は新ソフト「FUSE」について詳しく聞いてみます。お楽しみに。