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杉原嵩之氏 杉原嵩之氏
  それはクリエイティブの世界に限ったことではないが、現業に別の分野から転進してきたというケースをしばしば見かけることがあり、それらは没個的になりがちな状況でも異彩を放っていることが多い。野球選手が格闘家になったり、高校教師がミュージシャンになったり、漫才師が映画監督になったりと途中で大幅に路線を変えた人は、視野の広さか先入観の無さか、パフォーマンスや作品もドラスティックでオリジナル感の強いことが多い。

民族単位の移動の多いアメリカの映画や小説では「自分がどこから来たのかを忘れるな」というフレーズをよく耳にするが、それは地理的なことだけではなく環境や背景も指している。いくら金持ちになって上流階級に入っても、ゲットーの仲間を忘れるなという使い方だったり、生まれや育ちがアメリカでも祖先、というより数代前にアフリカやアジアからきたばかりであることの文化的な意味を絶やさずに今に活かせ、という意味だったりする。

実際クリエイティブ分野でもまさに生え抜きではないが為に、クリエイター自身が分野をスライドする前に元々居たジャンルのセンスやコンセプト、視点や味付けなどを忘れずに新たに融合させ、それまでにないあたらしい作品を作り出しているケースも多々ある。

特にグラフィックデザインの分野では、イラストをベースとしたり写真家がグラフィックも手がけていたりとクロスジャンルなケースもよく見かけるが、その中でも建築分野出身のデザイナーは「機能優先」の分野からきているだけに、その作品にも無駄のない美しいものが多い。

今回はそんな、建築を学んだ後にグラフィックデザイナーとなり、現在「+81」のグラフィックデザインから某大手自動車メーカー用次世代端末のインターフェースのデザインまでを幅広く手がける杉原嵩之氏にインタビューを試みた。

 Q.今一番興味をもっている分野について教えてください。
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▲archicrash graphic designのロゴ(杉原氏のユニット)
雑誌「+81」の紙のデザインをしばらくやらせて頂いていたんですが、最近そこ関連で紙だけでなくWEBをやったり、これから映像にもいったりする予定なので、そのクロスジャンルぶりに興味があります。クロスジャンルといってもデジタルのグラフィックデザインという観点から見たら同じなのかも知れないですが、逆に今はメディアの幅を広げるのが楽しいですね。
 Q.自分の中での代表作というものはどういうものですか。
過去の作品は見ると常に改良点というか「こうすればもっとよくなるのに」という個所が見つかってしまうので、今まででやった中でこれ!というのは特にないですね。逆にもっとこうしたいとか歯がゆいものを感じます。常にクリエイティブの引き出しを増やしたり改良したりしているので、いつも次回作には更に期待して、という感じです。
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▲最近の作品 ※クリックで拡大できます
 Q.尊敬するクリエーターにはどんな人がいますか。
建築家のミース・ファン・デ・ローエ(1886-1969 ドイツ出身の建築家)です。大学の頃に彼の存在を知って考え方などに強く影響を受けました。建築は一般のアートと違って、機能が大前提というか圧倒的な第一優先になるので彼の「less is more」という言葉が表す通り、機能美というか、どう削いでいく中で機能させるかに焦点を置いた考え方が今の自分の作品に大きく影響しています。

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▲3月に行われた+81参加デザイナーによるグラフィック展 [+81 Graphic Exhibition]の時の作品
 Q.クリエイターになるにあたって、もう一度やり直すとしたらどの部分をやり直しますか。
これは今でもそうなのですが、もっと旅行をしておきたかったです。いろいろな国の建築物なんかを写真で見ることはできても、実際に湿気がひどいとかそういうことから文化的なことまでを肌で感じて、その背景をふまえての建築を見るのはやはり別物だと思います。ただ、今は外国よりは国内のいろいろなところを回ってみたいですね。

 Q.今後短期的にと中長期的に、どういった方向に進んでいきたいですか。
短期的には紙の仕事をもっとやりたいですね。PCをつけなくてもTVをつけなくても「ほら、これ」って見せられるものを、今すごくやりたいです。それと3月にもやったのですが、展示会というかグループ展や個展をやりたいですね。実際いま幾つかの話を進めていて年内にはできそうですね。自分の紙の作品や写真、映像のインスタレーションなどもやりたいです。今までがどちらかというと受動的にやってきた感じなので今後はもう少し能動的というか積極的にやっていきたいですね。長期的には・・うーんとにかく10年後でも20年後でも何かを造っていたいですね。

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▲roughark INTERAKTIV.のロゴ(杉原氏のユニット)

杉原 崇之 // Takayuki Sugihara

birthday: 1974/12/31
プロフィール: 学部で、建築を専攻。その後大学院にて建築学を専攻。
その頃Macに触りはじめ、フリーで建築設計、建築CGパースを仕事としながら、デザイナーへとシフトチェンジ。その後外資系デザインプロダクションを経て、フリーランスとして現在に至る。プリント、ウェブを中心に活動中。
E-mail: tk@roughark.com
URL: roughark INTERAKTIV. http://www.roughark.com
archicrash graphic design http://www.archicrash.com
現在の活動および告知: ・6月中旬+81 Magazine websiteリニューアル予定。
 関連URL http://www.plus81.com/
 (紙面デザインにも参加)
・7月初旬発売予定の雑誌の創刊号にアートディレクターとして参加。(内容はまだ内緒)
・夏頃友人のイラストレーターとコラボレートした展示会を予定。(青山近辺)
 詳細は近日上記URLにて告知予定。要チェック。