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DTP by Yuko Fukuma
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 今回は「指定」について少しふれていきたい思います。
  最近はほとんどの印刷物がDTPを利用して作られています。これにより文字は写植からデジタルフォントが主流になり、デザイナーが入稿時に文字の指定をする事は少なくなりました。しかし写真はデジカメが発達して実画像で入稿する事が可能になってはいますが、まだ印刷所で分解してもらう事の方が多いと思います。

 なのでデザイナーは「あたり」とよばれる軽いデータでレイアウトをし、入稿時に出力見本にいろいろと書き込みをしていきます。この書き込んだものが「指定」です。
 ここで間違った「指定」をしてしまうと、自分の意図する仕上がりにならない場合があり、データがあるのだから分かるだろう的な勝手な思い込みをせず、正確におこなわなければなりません。

 私も時々どうやって指定すればいいのだろうと悩む事があり、印刷所に直接聞く事もあります。今まで版下を作成してきた人にとっては、あたりまえの事でも、DTP導入後からこの仕事に携わった人にはちんぷんかんぷんという場合もあると思います。
 そこで今回はこいう場合はこのように指定するといったものをいくつか説明していきたいと思います。(これは人により若干の表現の違いがあり、私が実際このように指定して問題なかったというものを紹介していきます)


1)写真の濃度を薄くして文字をいれたい

 単色印刷(例として、m100)で写真に文字をいれる場合やバック地としてひきたい場合は、写真の色の濃い部分に文字を白ヌキにするか、薄い部分に文字をのせるというのが一般的だが、この写真のように全体に濃淡があるものはどこに文字をいれれば良いか困ってしまう。
 このような場合は写真の製版をおとして文字をのせるという方法がある。この時の指定は「ph、m100で分解し50%トーンで製版」と指定する。この「50%トーン」というのは写真の濃度を半分にするという事で、更に薄くしたい場合はもとの写真原稿の濃度を100として、そこから%の数字を少なくすれば良い。データ上はまず(その1)でやった要領で画像をm100にした後、レイヤーの上部分にある「不透明度」を50%に設定して画像を統合すればよい。これで指定したものと同じ画像の状態になった。

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▲これがもとの写真。

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▲単色m100に変えたもの。ここにm100の文字をのせると写真の上部分は読めるが、下は画像の色が濃いので読みづらくなる。逆に白ヌキにすると上部分や人の洋服にかかる文字は読めなくなってしまう。

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▲「背景」となっている画像をダブルクリックすると「レイヤー」に変わる。
この状態になっていないと画像の編集ができない。
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▲はじめの画像と比べてみよう。
画像を統合すると写真の濃度が薄くなっているのがよく分かる。

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▲このように文字を全面にのせても、ちゃんと読む事ができる。

 

2)写真の一部分の濃度を薄くしたい

 次に写真のどこか一部だけ薄くしたいという場合はどのように指定すれば良いかをやってみよう。
 データ上では写真の上に白地をひいて、その上に文字を配置する。こうすると白地部分は写真をつぶしてしまう事になる。しかし出力見本に白地部分を囲んで「白地部分のph50%トーンで製版」とするとその部分だけ写真の濃度が薄くなり、完全につぶさなくても文字を読む事ができる。

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▲出力したものにこのように書く
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▲印刷されるとこのようになる。
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▲拡大したもの。何も指定しないとデータ通り完全に写真が白地で隠れる。
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▲指定するとこのように写真が薄らと透けてみえる。

*次回は「ノセ」と「ヌキ」の違いについてやっていきます。

「完全データ入稿」の疑問と不安

 先程も言いましたが最近は「完全データ入稿」といって全て実画像で入稿するという方法が、徐々にではありますが増えてきています。DTPにより写植屋さんがやっていた仕事をデザイナーがやるようになったのと同じように、いつかはこれがあたりまえになってしまうのではないかと不安に思います。
 これはコストやスケジュールの面ではメリットがあるのかもしれませんが、デザイナーだけの視点で言うと正直、迷惑な話としか言えません。デジカメ画像を扱う際、いつも疑問に思うのが「画像の色の責任は誰にあるのか」という事です。今まで色校正では、写真の色は紙焼きやポジの色が再現できているかを確認し、違う場合は指示を書いてきましたが、デジカメなどの画像の場合、色見本がない場合が多いのでデザイナーの視点だけで色の指示を書いたり、データを直さなくてはなりません。しかし撮影した現物を1点1点見ているわけではないし、それっておかしいのではと感じてしまうのです。
 DTPが導入され、どこからどこまで誰の責任かというのが非常に曖昧な場合が多く、それによって紙面のクオリティを下げる事になってしまわないかと不安に思う今日この頃です。

writer:Yuko Fukuma
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