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soft and hard.  
 ソフト開発という職業がある。昔は非常にレアな職業であったが、ここ20年ほどでデジタルコンテンツというものが、日本が世界に誇るメインストリームのエンターテイメントのひとつとなってきたことによって、急速に必要とされる花形職業になってきた。デジタルエンターテイメントはゲームソフトが中心となり、はじめはファミリーコンピュータなどの専用機を主として成り立ってきたものであるが、最近はPC専用のソフトも広く一般にクローズアップされるようになってきた。PC自体の普及や性能アップ、そしてネットのブロードバンド化でPCだからこそ再現できるソフトも増えてきており、ゲーム専用機などがネット対応にしたりキーボードをつけたりと、PCに近づこうとしている部分も最近ではよく見うけられる。どちらにしてもデジタルエンターテイメントのための環境は未だ良くなるばかりで、ソフト、ハードともに今後も更なる革新を遂げていくことは間違いないだろう。

 そんな中ソフト開発というのは、自分の世界をデジタルで現実化できる非常に魅力的な仕事であるが、映画でいえば監督でありながらキャスティングや脚本家でもあり、多彩なイマジネーションとそれに対応できるだけの知識との両方を必要とする、ハードルの高い職業でもある。

 今回は株式会社シノミクスにおいて「アクアゾーン」という一世を風靡しているリアルな熱帯魚の育成シミュレーションソフトの開発を、ここ10年ほど行っている風見清司氏にインタビューを試みた。

作品
言葉
Q1:現在の主な仕事内容を教えてください
 大きく括ると「アクアゾーン」という魚育成のシミュレーションソフトの開発を行っています。正確には自分自身は生物生理などが専門でプログラムなどをしないので、開発しようとしている「生物」の生態調査を行ったり、それが実際プログラムを通して表現することが可能になるのかを考えたり検証したりしています。そしてそれが可能であるとなったならばそこから仕様書を書くまでを行って、プログラムのチームやグラフィックデザインのチームとのすり合わせと進行管理などをしています。
 
Q2:子供の頃は何に興味があり、将来何になると思っていましたか
 得意分野は生物学全般なのですが、小さいころから昆虫や動物が大好きでしたね。大好きというか一番の興味の対象でした。小学校のころ、友達の家の庭に底に石を敷いた小さな池を作って、そこに、釣った魚をいれていたりしていました。他にも、採ったウシガエルを家にもって帰って焼いて食べたり、ザリガニを煮て食べたりなど、他の子供はしないだろうなというレベルで生き物とかかわっていました。将来何にというより、そのままずっと生き物の生態に興味をもってここまできた感じですね。
作品
Q3:もし違ったジャンルのソフトを開発するとしたらどのようなものになりますか
 今日までに「アクアゾーン」と「ピナ」という魚と鳥のシミュレーションソフトを作ってきたのですが、方向は変わらず自然界全体とかそういったものの開発はやってみたいなと思っています。ただあくまで商品なので開発費と売れる数とがあわないものは難しいですね。ユーザーさんからの依頼も含めて他の生き物などやりたいものはたくさんあるのですが、やはりまだPCの性能や技術の限界も多々あります。
作品
Q4:ソフト開発にはいつごろからどのようなきっかけで入りましたか
 ずっと生き物の生態に興味があったので、大学でも生物生理を専攻したのですが、最初は外資系の製薬会社に就職して主にリサーチなどを行っていました。そこである日「生物シミュレーションソフトの開発を行うので生物に詳しい人募集」というのを見て「あっ、これいい」と思って面接を受けたのがきっかけです。
 
 ただ始めはPCもそんなに詳しい訳ではなかったですし、当時(1994年頃)は商品の配布もフロッピーディスクだったこともあって、いろいろな制約の中での開発でしたね。
 最近は数MBならネットで落とせますし、開発環境も良くなっていて遺伝子のシミュレーションで生まれてくる子供の色などもリアルに再現できるようになりました。
作品
Q5:通常の一般的なプロジェクトの流れを教えてください

 はじめに営業セクションがマーケティングデータを元におおざっぱな「こういうターゲットに対するこういうボリュームのソフトが欲しい」というものをあげてくるので、まずはそれに対する候補選択というかリサーチですね。この魚がいいとかこの魚は楽しいだろうとか。
 それが決まったら内容を仕様書に落として、プログラマーさんとグラフィックさんに投げます。そこからキャッチボールを何度もして、画質のきれいなテクスチャーを、ユーザーのハンドリングを考えて圧縮したり、プログラムのデバッグを行ったりして完成まで持っていきます。
 この間だいたい早ければ半年、長いと数年かかったりします。

作品
かざみ・きよし
東京都葛飾区出身
幼少のころより昆虫動物といった生き物全般に多大な興味を持ち、そのまま大学では「生物生理」を専攻。
卒業後外資系製薬会社に勤務。
94年に生物学のスペシャリストとして「アクアゾーン」の開発に関わるために 「9003(シノミクスの前身)」に転職。
「アクアゾーン」シリーズ「ピナ」などの開発担当として現在に至る。
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